宮城県女医会女性医師キャリアデザイン支援事業の進展
1.宮城県女医会の女性医師の働く環境改善のための取り組みの始まり
宮城県女医会創立30周年記念事業として、宮城県内在住の女性医師689名へのアンケート調査を行った。出産後退職を勧告された、病弱な子供を育てる苦労、当直や出張を一人前に出来ない心理的な負い目、時間不足のため、研究を続けられないなど、女性医師の抱える悩みが浮き彫りにされている。
女性医師宮城県女医会および会員による平成12年から18年まで取り組みは次のようになる。
- 平成12年 宮城県女医会30周年事業として
「女医の生活・就職・職業に関する調査」の実施
宮城県内女性医師689名への質問 回収率29.8% - 平成13年 東北大学星陵地区病児保育施設の開設
平成9年に実施した東北大学医学部教室員会のアンケートから出発
宮城県女医会員が開設のための支援(宮城県女医会は毎年助成金交付) - 平成14年 第1回東北大学男女参画シンポジウム 研究・教育とジェンダー
~東北大学における男女共同参画の現状と課題
山本蒔子が女性医師の立場からシンポジストとして参加 - 平成15年 第2回東北大学男女共同参画シンポジウム
「星陵地区における病児保育施設の運営について」沢柳賞受賞 - 平成17年 日本生理学会男女共同参画推進シンポジウム 5月
山本蒔子「女性医師の働く環境」を講演 - 平成17年
東北大学病院長から子育て中の女性医師の実態調査の依頼
宮城県女医会会員海老原孝枝を推薦 10月に実施
東北大学病院長に要望書提出 いくつか改善が得られる - 平成18年
「宮城県における子育て中の女性医師の労働環境整備に関する研究」への研究助成金を授与
東北大学小児科 福與なおみ 特に小児科領域で調査 - 平成18年
第5回東北大学男女共同参画シンポジウムにて海老原孝枝と
WGが沢柳賞を受賞「子育てにかかわる女性医師のテーラーメイド勤務体系の確立」
2.宮城県女医会の女性医師支援事業の開始
以上のような経過を経て、平成19年の宮城県女医会定時総会(7月7日)において、新たな事業計画として、女性医師支援への取り組みを始めることを発表し、承認された。その席に出席されていた、宮城県保健福祉部医療健康局長 中山 鋼先生から、宮城県としてもサポートをしたいともお話を頂いた。
7月11日に早速宮城県庁に出向いて中山健康福祉局長と佐々木医療整備課長と話し合いを持った。女性医師は孤立無援で、頑張っている場合が多い。病院を辞めたり勤務形態を変えたり、休職する前に、辞めないような支援が大切。女性医師の就労支援、進路の悩みなどの相談を宮城県女医会の先輩が受ける女性医師へのキャリアカウンセリング事業を提案したところ、宮城県として共同で行うことになった。
3.女性医師キャリアデザイン支援委員会の発足
委員会が正式に発足し、第1回は7月23日に開催された。宮城県医師会、宮城県女医会、宮城県からの委員が選出された。
キャリアカウンセリングを行うことを知らせるためにポスターを作成し、医師会報や艮陵新聞に入れてもらう。マスコミに取り上げてもらう、などが決められた。ポスターは公立病院、大学病院などにも貼ってもらうことにした。電話予約の窓口は県医師会総務が担当することになった。
第2回女性医師キャリアデザイン支援会議は9月10日(水)に開催された。
女子医学生、研修医向けのセミナー準備が話し合われた。また、キャリアカウンセリングを受けたい女性医師を積極的に探してほしいとの意見が出された。
4.女性医師として働き続けるためのシンポジウムやセミナーの開催
平成20年から22年までは以下のような内容で開催された。
- 第1回女性医師キャリアデザインを考えるシンポジウム
10月11日 艮陵会館
①勤務医の悲鳴
―女性医師が医療崩壊を防げるか―
宮城県医師会副会長/仙台医療センター名誉院長 櫻井芳明
②子どもが病気になったらどうしよう―病児保育室開設の取り組みー
町立南郷病院医師 佐々木潔子
③女性が生涯仕事を続けていくために
宮城県医師会常任理事/日本女医会会長 小田泰子 - 女性医師の働き方を考える会
東北大学医学部教室員会が中心になって、宮城県女医会からも参加した。
11月29日(土)臨床講義棟 1階 出席者17名(うち宮城県女医会会員7名) - 第2回女性医師キャリアデザインを考える
平成21年2月21日 仙台医師会館5階
①女性医師の働く環境 宮城県女医会会長 山本蒔子
②東北大学病院
子育てに係る女性医師の勤務体系について
東北大学病院 老年科 助教 海老原孝枝
③当院におけるワークシェアリングの実践 中嶋病院 外科医長 菊川利奈
④レジデントとしての子育て体験
国立病院気候仙台医療センター 放射線科 佐藤慶子
⑤女性医師が子育てをしながら働くには
~女性医師を妻に持つ夫の立場から~ 福與 聡
⑥私達には夢がある
宮城県医師会常任理事/日本女医会会長 小田泰子 - 第3回女性医師キャリアデザインを考えるセミナー
「女性医師の輝かしい未来のために」
平成21年9月26日 宮城県医師会館 女性医師30名出席
福與なおみ(東北大学小児科)と高橋克子(宮城県医師会理事)が進行役となり、以下のリーダー6名が各自の所信を述べその後グループディスカッションを行った。
進藤百合子(仙台オープン病院内科)
石垣展子(仙台医療センター産婦人科)
菊川利奈(宮城県立がんセンター外科)
植松惠(東北大学眼科) 西井亜紀(JR仙台病院小児科)
海老原孝枝(東北大学老年科) - 第4回女性医師支援セミナー 「医師を続けましょう」
平成22年7月3日 ホテルコムズ仙台
特別講演
女性医師支援の流れと日本医師会における私達の取り組み
日本医師会常任理事 保坂シゲリ
シンポジウム 座長 海老原孝枝(東北大学老年科)
女性医師の労働支援にとって東北大学教室員会の役割とは
吉永浩介(東北大学病院産婦人科)
保育所に求めること 福與なおみ(東北大学小児科)
保育園の選択 石垣展子(仙台医療センター産婦人科)
職場で見守られて育っていく子ども達 安藤由紀子(金上病院) - 平成22年女子医学生・研修生支援セミナー
「女性医師のお仕事って?」
平成22年10月2日 艮陵会館
以下のようないろいろな科や所属の女性医師が自分の体験を話した。その後小グループに分かれて討議を行った。
佐々木悦子産婦人科クリニック 佐々木悦子
いわき市立総合磐城共立病院 整形外科 菅野敦子
東北大学卒後研修センター 渋谷祥子
東北大学病院 小児科 内田奈生
東北大学加齢学研究所 臨床腫瘍学 工藤千枝子
5.宮城県女性医師支援センターの発足
女性医師キャリアデザイン支援会議は名称を宮城県女性医師支援会議と改めた。また、活動のための組織を作り、宮城県女性医師支援センターとした。センター長・副センター長・庶務・広報・保育サポート(ホームページ作成)・相談窓口およ び復職支援で構成され、さらに活動を進めている。作り、宮城県女性医師支援センターとした。センター長・副センター長・庶務・広報・保育サポート(ホームページ作成)・相談窓口およ び復職支援で構成され、さらに活動を進めている。
宮城県女医会の会員は、男性優位社会である医学医療の世界において、いろいろな困難を乗り越えて、仕事を続けている。最近医師不足がクローズアップされて、その原因の一つに女性医師が育児などを理由に仕事を半ばで辞めてしまうためと言われるようになった。今まで全く個人的な問題とされてきた女性医師の働く環境を、社会問題として取り上げられるようになったことは大変な進歩と思う。